中国にいて感じたこと

「一人っ子政策」

中国で一人っ子を失った親がデモを実施したニュースが以前あった。

中国「失独家庭」100万の怒り――「一人っ子政策」が悲劇を生んだ

(一人っ子政策を推進していた)当時、政府は『一人っ子政策を守れば、老後の面倒をみる』と言っていたが、その一人っ子を失い、私たちの面倒を誰が見るのかという親のデモである。

中国の人と会話していて日本人と比べてとても親思いだなと感じることがとても多い。特に女の人と会話していると、必ず会話に出てくる。儒教精神、一人っ子政策時に組み込まれた子が親の面倒を見るという思想がうまく体現されているためか、親・祖父母をとても尊敬している。また子供は親にマンションを買って面倒を見るというのがデフォルトのように感じる。

中国は日本と同じく階層がある。ただし、ジニ係数は0.6(2012年)というほど日本と比較し格差がとんでもなく大きい。また日本と同じ最終学歴で職業、つまり収入が決まる。いわゆる下層に位置する人々は借金持ちが多く、その原因が親にマンションを買ったという話をとてもよく聞く。中国では簡単にお金を借りることができるようで、年収と借入金額を聞くと、その人が一生かかっても返せないんじゃないかと思う時がある。そういう人々ほど当然ながら、「お金」にとても執着している。

 

「お金より義を優先することもある」

今回、年初にNDAを締結した事案、オフショア先の会社の一部署を他社に売却する件で、今年は何回か中国へ行った。この事案を推進した部署は、売却先への全員の転籍を期待し、通常は以下の3つの選択肢で推進するが、この事案では[B]が無かった。

[A]会社に残って、他部署へ行く(日本同様、どの部署に行くかはわからない。中国では給料が下がることは無い。賞与は下がる。)

[B]経済賠償金をもらって退職する

[C]経済賠償金をもらって売却先へ行く(日本では転籍と言うが、中国には転籍という考え方が無い)

売却先へ行かず会社へ残ることを選択した人たちとの食事会があった。行くか行かないかは個人の選択で自由な中、ポジションが高い人ほど残る[A]の選択をした人が多かった。売却先が格下であるため「メンツ」を優先していた。会社に残ると宣言した親友を優先し部長のポジションを捨ててまで残ることを決めたTさんは、色々考えた結果、一生の友達(親友)と一緒にいることを選択し、私の理解を促すかのように冒頭の台詞である「お金より義を優先することもある」と言った。三国志の桃園の誓いを思い出した。

本題とはそれるが、「彼とは親友だ。」ということを本人を目の前にして言うことは今の日本では少ない。飲み会の席で親友に対してはっきり、親友だ、それも一生の親友だとは日本人感覚では相手に恥ずかしくてとても言えない。そういう深い人間関係を避ける、または避けるよう教育されてきたことが今の日本の色々な問題を引き起こしているように感じる。

 

「結局、どういうことなのか」

この食事会の後、売却先へ行く選択した人たちへそれとなくヒアリングし、すべて「お金」で選択していることを確認した。ポジション高い人で行きたくないが奥さんに「お金」のため行けと言われ行くしかないと言ってる人もいた。(中国は奥さんの意向が日本より強く働く。)売却先へ行く一番高いポジションの人は株もマンション投資もしない人で、親にマンションも買い、家族含め日々の生活が大変だ、そもそも行くしか選択肢が無いと言っていた。

2~3年前までは、中国に渡航する度に宴席では中国スタッフがマンションの所有戸数を仲間で競い、日本人である私に誇っていた。また株式市場も上がった。今でさえ、株式は下がり、中国経済そのものの先行きが心配されるが、過去に価値が上昇している中で着実に利益確定しお金を持っている人がいたわけだ。(私よりお金持ちがいっぱいで現時点で1億円ぐらい持っている人もいた。)

つまり中国人がよく言う「お金」と「メンツ」のうち、お金持ちが「メンツ」、貧乏人が「お金」を優先したということだったのだ。逆に「メンツ」を優先できる人が全体の人数の25%もいたことにびっくりした。残った中には「愛社精神」を言う貧乏な若い人が一部いたことを付記しておく。

 

最後に話は変わって、中国人と会話していると日本人は自分を律し過ぎていると思う。中国での生活の中で感じる中国人の持つこの自由さはなんなんだろうと中国にいると思う。